「自分の作った曲、なんだか迫力がない…」「ミックスしても音がごちゃごちゃして聴こえる…」
自宅でのDTM(デスクトップミュージック)や音楽制作で、こんな悩みを抱えていませんか?
その原因は、もしかしたら「音の出口」、つまりヘッドホンにあるかもしれません。
普段音楽を聴いているリスニング用のヘッドホンは、実は音楽制作には不向きな場合があります。
この記事では、音楽制作の精度を劇的に向上させる「モニターヘッドホン」について、その選び方からプロの現場で信頼されるおすすめの有線モデル5選まで、徹底的に解説します。
あなたの自宅を、理想の音作りに集中できるスタジオに変えるための「最高の耳」を、この記事で見つけてください。
目次
自宅スタジオの「耳」となるモニターヘッドホンとは?
モニターヘッドホンとは、一言で言えば「音を分析・評価するためのヘッドホン」です。
音楽制作やレコーディングの現場で、エンジニアやミュージシャンが音のバランス、細かなノイズ、エフェクトのかかり具合などを正確にチェックするために使われます。
その最大の特徴は「原音忠実性」。
つまり、録音された音を脚色することなく、ありのままに再生する能力に長けています。
リスニング用ヘッドホンとの決定的な違い
では、普段私たちが音楽鑑賞に使う「リスニング用ヘッドホン」とは何が違うのでしょうか。
最大の違いは、その目的にあります。
- モニターヘッドホン: 音を「分析」することが目的。低音から高音までフラットな音質特性を持ち、解像度が高い。
- リスニングヘッドホン: 音楽を「楽しむ」ことが目的。迫力が出るように低音が強調されていたり、高音がきらびやかに聴こえるように調整(チューニング)されていることが多い。
リスニング用ヘッドホンは、いわば「味付け」がされた状態の音を聴いていることになります。
この味付けされた音でミックス作業を行うと、他の再生環境(例えばスマートフォンのスピーカーやカーオーディオ)で聴いたときに「思っていた音と全然違う…」という事態に陥りがちです。
なぜ音楽制作にはモニターヘッドホンが必須なのか
音楽制作は、様々な楽器の音を重ね、音量や定位(左右の配置)を調整し、一つの楽曲として完成させる作業です。
この過程で、各パートの音が他の音に埋もれていないか、不要なノイズは入っていないか、といった微細なチェックが不可欠になります。
モニターヘッドホンを使うことで、
- 正確な音量バランスの調整
- EQ(イコライザー)やコンプレッサーなどエフェクトの微調整
- 微細なノイズの発見
- 各楽器の定位の把握
などが可能になり、作品のクオリティを格段に向上させることができます。
まさに、クリエイターの「正確な耳」として機能する、不可欠な機材なのです。
後悔しないモニターヘッドホンの選び方4つのポイント
いざモニターヘッドホンを選ぼうとしても、様々な種類があって迷ってしまいますよね。
ここでは、あなたの制作環境や目的に合った一台を見つけるための4つの重要なポイントを解説します。
【最重要】密閉型か、開放型か
ヘッドホンの構造は、大きく「密閉型(クローズドバック)」と「開放型(オープンバック)」に分かれます。これはモニターヘッドホン選びで最も重要な分岐点です。
密閉型(クローズドバック)
特徴:
ドライバーユニット(音を出す部分)の背面がハウジングで完全に覆われているタイプです。
- メリット: 遮音性が高く、音漏れが少ない。外部の騒音をシャットアウトし、レコーディング時にマイクがヘッドホンの音を拾ってしまう「音被り」を防ぎます。 また、音がダイレクトに耳に届くため、タイトで迫力のある低音を感じやすい傾向があります。
- デメリット: 音がこもりやすく、自然な音の広がり(音場)を感じにくい場合があります。長時間の使用で耳が疲れやすいと感じる人もいます。
- おすすめの用途: ボーカルや楽器のレコーディング、周囲の音が気になる環境での作業、DJプレイ
開放型(オープンバック)
特徴:
ハウジングの背面がメッシュ状などになっており、音が外に抜ける構造です。
- メリット: 音がこもらず、自然で広がりのあるサウンドが特徴。 まるでスピーカーで聴いているかのような音場感が得られます。 長時間使用しても疲れにくいのも利点です。
- デメリット: 音漏れが大きく、遮音性も低いため、静かな環境でないと使用が難しいです。レコーディング時のモニターには向きません。
- おすすめの用途: 自宅の静かな部屋でのミックス、マスタリング作業
最初の1台はどっち?
DTM初心者で、レコーディングからミックスまで1台でこなしたい場合は、汎用性の高い「密閉型」がおすすめです。
音質を左右する「周波数特性」と「解像度」
周波数特性とは、ヘッドホンが再生できる音の高さの範囲(Hz:ヘルツ)を示すものです。 人が聴き取れる音の範囲は一般的に20Hz〜20,000Hzと言われています。 この範囲を広くカバーし、かつ特定の帯域が不自然に強調されていない「フラット」な特性のモデルがモニター用途には適しています。
解像度は、音の細やかさや分離の良さを表します。解像度が高いヘッドホンは、リバーブの微細な響きや、重なり合った楽器の音を一つひとつ聴き分けることができます。
長時間作業の味方「装着感」と「重量」
DTMは長時間に及ぶ作業です。そのため、ヘッドホンの装着感は非常に重要です。
チェックすべきは以下のポイントです。
- イヤーパッド: 耳を完全に覆う「オーバーイヤー型」か、耳の上に乗せる「オンイヤー型」か。 オーバーイヤー型の方が没入感や遮音性が高い傾向にあります。
- 側圧: ヘッドバンドが頭を締め付ける力。強すぎると頭痛の原因になりますが、弱すぎるとズレやすくなります。
- 重量: 当然ながら、軽い方が首や肩への負担は少なくなります。
これらは個人の頭の形や好みによる部分が大きいため、可能であれば実際に試着してみるのが理想です。
意外と見落としがち?「インピーダンス」と「リケーブル」
インピーダンス(Ω:オーム)は、電気抵抗の値のことです。
- ローインピーダンス (~80Ω程度): スマートフォンやPCでも十分な音量が得やすい。
- ハイインピーダンス (80Ω~): 高音質ですが、十分な音量で駆動させるためにはヘッドホンアンプやオーディオインターフェースが必要になる場合があります。
リケーブルとは、ケーブルを交換できる仕様のことです。
ケーブルは消耗品であり、断線の原因になりやすいため、リケーブル対応モデルは長く愛用できるというメリットがあります。
【2025年版】原音忠実!プロが選ぶ有線モニターヘッドホンおすすめ5選
ここからは、上記の選び方を踏まえ、数多くのクリエイターやエンジニアから絶大な信頼を得ている定番の有線モニターヘッドホンを5つ厳選してご紹介します。
1. SONY MDR-CD900ST|すべてのスタジオにある「基準の音」
| スペック | 詳細 |
|---|---|
| タイプ | 密閉ダイナミック型 |
| ドライバー | 40mm |
| インピーダンス | 63Ω |
| 周波数特性 | 5~30,000Hz |
| 重量 | 約200g(コード含まず) |
| 特徴 | 圧倒的な解像度、修理可能な部品供給 |
もはや説明不要、日本の音楽スタジオで「これがない場所はない」と言われるほどの超定番モニターヘッドホンです。 YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」でアーティストが使用していることでもお馴染みですね。
サウンドの特徴
そのサウンドは「究極の普通」であり、まさに「基準の音」。
音の輪郭が非常にはっきりしており、各楽器の音が分離して聴こえるため、ミキシング時の微妙な調整やノイズチェックに絶大な威力を発揮します。 特に中音域の再現性には定評があります。
注意点
業務用機材として開発されたため、メーカー保証がなく、修理は有償となります。 また、プラグが標準プラグ(6.3mm)のため、PCやスマートフォンに接続するには変換プラグが必要です。 装着感はやや硬めで、長時間の使用で耳が痛くなるという意見もあります。
こんな人におすすめ
- プロと同じ基準で音作りをしたい人
- 音の粗探しや分析的な聴き方をしたい人
- ボーカルや楽器のレコーディングを頻繁に行う人
2. SONY MDR-M1ST|現代のハイレゾ環境に対応した「新たな定番」
| スペック | 詳細 |
|---|---|
| タイプ | 密閉ダイナミック型 |
| ドライバー | 40mm |
| インピーダンス | 24Ω |
| 周波数特性 | 5~80,000Hz |
| 重量 | 約215g(コード含まず) |
| 特徴 | ハイレゾ対応、着脱式ケーブル、快適な装着感 |
MDR-CD900STの登場から30年の時を経て、ソニーがハイレゾ音源のモニタリングを視野に開発した次世代スタジオモニターヘッドホンです。
サウンドの特徴
CD900STの原音忠実性は継承しつつ、よりワイドレンジな再生能力を獲得。特に低音域の表現力が豊かになっており、現代的な音楽制作のニーズに応えます。 CD900STが「分析的」なサウンドだとすれば、M1STはより「音楽的」な側面も持ち合わせており、リスニング用途でも楽しめる自然な音質が魅力です。
改善されたポイント
ユーザーからの要望が多かったケーブルの着脱に対応。 イヤーパッドも改良され、装着感が大幅に向上しており、長時間の作業でも疲れにくくなっています。
こんな人におすすめ
- ハイレゾ音源など、高音質な楽曲制作を行う人
- 長時間の作業でも快適な装着感を求める人
- モニタリングとリスニングを両立させたい人
3. audio-technica ATH-M50x|世界が認めた高コスパ・万能モニター
| スペック | 詳細 |
|---|---|
| タイプ | 密閉ダイナミック型 |
| ドライバー | 45mm |
| インピーダンス | 38Ω |
| 周波数特性 | 15~28,000Hz |
| 重量 | 約285g(コード含まず) |
| 特徴 | バランスの良いサウンド、豊富な付属品、高い耐久性 |
日本のスタジオではSONYが定番ですが、世界中のスタジオやDJ、クリエイターから絶大な支持を得ているのが、このaudio-technica ATH-M50xです。
サウンドの特徴
フラットでありながら、深みと迫力のある低音が特徴。 全体的な音のバランスが良く、音楽制作からDJプレイ、普段の音楽鑑賞まで、あらゆる用途で高いパフォーマンスを発揮します。 密閉型ながら音場も比較的広く、定位感も正確です。
使い勝手の良さ
1.2mストレート、3mストレート、1.2mカールコードの3種類の着脱式ケーブルが付属し、用途に応じて使い分けられるのが非常に便利です。 ハウジングが90度反転する機構を備え、片耳でのモニタリングも容易。
こんな人におすすめ
- 初めてモニターヘッドホンを購入する人
- DTMから音楽鑑賞、DJまで幅広く使いたい人
- コストパフォーマンスを重視する人
4. SHURE SRH1840|開放型ならではの広大な音場と解像度
| スペック | 詳細 |
|---|---|
| タイプ | 開放ダイナミック型 |
| ドライバー | 40mm |
| インピーダンス | 65Ω |
| 周波数特性 | 10~30,000Hz |
| 重量 | 約268g(コード含まず) |
| 特徴 | 非常に自然でフラットな音質、広大な音場、軽量で快適な装着感 |
マイクやイヤホンでプロから絶大な信頼を得るSHURE社の、開放型モニターヘッドホンのフラッグシップモデルです。
サウンドの特徴
開放型ならではの、どこまでも自然でストレスのないサウンドが最大の魅力。 音の抜けが良く、まるでスピーカーで聴いているかのような広大な音場と立体的な定位感を体験できます。 特定の帯域を強調することなく、音源の情報をありのままに描き出すため、ミックスやマスタリングの最終チェックに最適です。
快適な装着感
約268gと軽量で、側圧も強くないため、長時間の作業でも疲れにくい設計です。 交換用のイヤーパッドやケーブル、ハードケースも付属しており、長く愛用できる配慮がなされています。
こんな人におすすめ
- ミックスやマスタリングで、スピーカーに近い環境を再現したい人
- 密閉型の圧迫感が苦手で、長時間の快適性を求める人
- 静かな自宅でじっくりと音作りに向き合いたい人
5. NEUMANN NDH 20|マイクの名門が作る超高解像度モニター
| スペック | 詳細 |
|---|---|
| タイプ | 密閉ダイナミック型 |
| ドライバー | 38mm |
| インピーダンス | 150Ω |
| 周波数特性 | 5~30,000Hz |
| 重量 | 約390g(コード含まず) |
| 特徴 | 非常にフラットでパワフルなサウンド、高い遮音性、堅牢な作り |
レコーディングスタジオの標準マイク「U 87 Ai」などで知られる、ドイツの名門NEUMANN(ノイマン)社が初めて手がけた密閉型モニターヘッドホンです。
サウンドの特徴
NEUMANNのモニタースピーカーのサウンドをヘッドホンで再現することを目指して開発されており、非常にフラットでパワフルなサウンドが特徴です。 全帯域にわたって解像度が極めて高く、音の立ち上がりや輪郭が明瞭。 特にタイトで輪郭のある低域は、スピーカーで大音量で確認できない環境において強力な武器となります。
プロフェッショナルな仕様
遮音性が非常に高く、レコーディング時のモニタリングに最適です。 アルミ製のハウジングや堅牢なヘッドバンドなど、プロの現場でのハードな使用にも耐える作り込みはさすがの一言。 インピーダンスが高めなので、駆動させるにはパワーのあるヘッドホンアンプやオーディオインターフェースが推奨されます。
こんな人におすすめ
- 音の細部まで徹底的にこだわりたいプロフェッショナルや上級者
- パワフルでアグレッシブなロックやポップスの制作を行う人
- NEUMANNブランドの信頼性とサウンドを求める人
さらに上の没入感を求める方へ
このようなハイエンドなモニターヘッドホンは、音源の細部まで正確に再現する能力に長けていますが、近年ではさらに一歩進んだ立体音響技術も注目されています。特に、ヘッドホンでスピーカーのような自然な音場を再現するハイエンドなHBS(Headphone Binaural Speaker)技術は、音楽制作における没入感を新たな次元へと引き上げる可能性を秘めています。より高度なモニタリング環境を追求する方は、こうした最新のHBS技術についてもチェックしてみると良いでしょう。
おすすめモデル比較一覧表
| モデル名 | タイプ | サウンド傾向 | おすすめ用途 | 価格帯(目安) |
|---|---|---|---|---|
| SONY MDR-CD900ST | 密閉型 | 超フラット・分析的 | レコーディング、ミックス | 2万円台 |
| SONY MDR-M1ST | 密閉型 | フラット・音楽的 | DTM全般、リスニング | 3万円台 |
| audio-technica ATH-M50x | 密閉型 | やや低音寄り・万能 | DTM入門、DJ、リスニング | 2万円台 |
| SHURE SRH1840 | 開放型 | 自然・広大な音場 | ミックス、マスタリング | 7万円台 |
| NEUMANN NDH 20 | 密閉型 | 超高解像度・パワフル | プロユース、ミックス | 7万円台 |
※価格は2025年12月時点のものです。
まとめ:最高の「耳」を手に入れて、あなたの音楽を次のレベルへ
モニターヘッドホンは、音楽制作における羅針盤のような存在です。
リスニング用ヘッドホンが「音楽を楽しむための地図」だとすれば、モニターヘッドホンは「目的地へ正確にたどり着くための海図」と言えるでしょう。
今回ご紹介した5つのモデルは、いずれも世界中のプロフェッショナルに愛用され、その性能が証明されている名機ばかりです。
それぞれの特徴を理解し、あなたの制作スタイルや環境に最適な一台を選ぶことが、作品のクオリティを飛躍的に高める第一歩となります。
この記事が、あなたの音楽制作の旅における最高のパートナー、最高の「耳」を見つける手助けとなれば幸いです。


